4.4 クロロフィル a

概要

クロロフィル aは、光合成に不可欠な緑色色素であって、“生きている”藻類量の目安とされている。藻類が死滅するとクロロフィルは分解し、配位しているマグネシウムが2個の水素で置換されたフェオフィチンとなる。湖沼や沿岸域のクロロフィル濃度は高く、外洋域では通常ごく低い値を示します。赤潮(ブルーム)時など非常に高い沿岸域での最大クロロフィル-a濃度は数10〜200μgdm-3を示すことがあり、風や流れによって吹き寄せられた場合、700μgdm-3またはそれ以上の濃度となることもあります。また外洋域や珊瑚礁などでは0.1μgdm-3以下の値を示します。 50μgdm-3程度以上のクロロフィル量になると湖水または海水は赤やピンク、茶褐色等の色が付いて見えるようになります。
クロロフィルはa,b,c,dの4種に分類され、Chl.aは全ての藻類に含まれ、chl.bは緑藻や緑虫類、Chl.cは珪藻、黄色鞭毛藻、過鞭毛藻類、chl.dは紅藻類などに含まれる。藍藻類はchl.a以外を含まない。光合成ではクロロフィルの他カロチノイドやフィコビリン等の色素が光エネルギーを吸収する。  
 
 

原理

クロロフィルは短波長の光(460nm付近)を受けて長波長の光(680nm)を放出する蛍光の性質を持っています。フィールドではこの蛍光を用いた測定法がよく使われています。蛍光測定は高感度(吸光法の10-100倍)ですが得られる値は無単位で、吸光光度法等による測定により校正を行う必要があります。クロロフィルaとクロロフィルbはそれぞれ430 nm と 460 nm付近に光吸収を持っている。さらに赤色の(Chl.a:663nmとChlb:645nm付近)の吸収を持っている。感度の面では劣るため海水中のクロロフィル定量では数リットル以上のサンプルが必要になることがある。
試料水を採取し、濾過後、濾紙上の懸濁物質から色素をアセトンで抽出する。この吸収を測定するがクロロフィルa,bの波長が接近しているためお互いに妨害をする。この実験ではアセトン抽出液について特定波長の吸光度を測定し、これらの吸光度からクロロフィル量を計算により求める。クロロフィルの定量は検量線法を用いず、既知のε(モル吸光係数)を用いて多成分同時定量法により行う。各波長の吸光度とクロロフィルa,bの濃度の関係は以下の連立方程式で表される。原理は左のスペクトル図に示しています。クロロフィルが緑色を示す理由は青色のの領域と赤色の領域を吸収するが緑の領域はほとんど吸収しない事による。

E663 = 0.08204Chl.a + 0.00927Chl.b
E645 = 0.01675Chl.a + 0.04560Chl.b
(Chl濃度はmg Chl.a ・dm-3)

装置・器具

  1. 吸引濾過装置
  2. 乳鉢
  3. 遠心分離器
  4. 遠心管
  5. 分光光度計
  6. ホールピペット、メスピペット、駒込ピペット。
  7. メスシリンダー
  8. ピンセット、ハサミ

試薬

  1. アセトン(90 v/v%)溶液:蒸留水100 mLに特級アセトンを加えて1 Lとする。
  2. ガラス繊維濾紙

操作

  1. 前処理
    1. 試料水500ml(クロロフィル濃度が低い場合(おおよそ1μgdm-3以下)は1000ml以上必要)をよく振り混ぜ、吸引濾過する。濾過が終了しても数分間吸引を続けて水分を除く。
    2. 懸濁物質とともに濾紙を細かく刻んで乳鉢に入れ、アセトン溶液2〜3 mlを加えながら、丹念にすりつぶす。乳鉢の内容物はアセトン溶液2〜3mlを用いて遠心管に洗い込む。 全量を10 mlとし、遠心管に栓をして1時間冷蔵庫に放置する。放置後、1,500〜3,000rpmで約10分間遠心分離する。上澄み液をメスシリンダーにとり、その液量を読み、これを検液とする。(本実験ではメスシリンダーに取らず10mlとして取り扱う)
  2. 吸光度の測定
    1. 90 %アセトンを対照(ブランク試料)として、波長750 nm, 663 nm, 645 nm, 630 nm,480nmで吸光度を測定する。 (90%アセトンの吸光度をブランクとして測定する)
      UVmin-1240での操作
      1.  電源を入れる。
      2. 「モード選択画面」から 「1.フォトメトリック」 を選択する。
      3.  吸光度ABS設定で(GOTO WL)キーで波長を選択する。
      4.  ブランク試料の入ったセルを入れ、吸光度を0にセットする。
      5.  測定試料の入ったセルを入れ、吸光度を読み取る。
      6.  波長を変更し、3.に戻る

計算

試水の濾過量をV mL、上澄液のアセトンの全量をa mL、L cmの吸収セルで測定を行ったとする。クロロフィルa,bのみを考え、2波長(645,663nm)での吸光度から連立方程式を用いて濃度を得る場合は
Chl.a (mg Chl.a ・dm-3)=(12.72 E663 - 2.59 E645 )x
Chl.b (mg Chl.b ・dm-3)=(-4.671 E663 + 22.88 E645 )x
クロロフィルa,b,cを考え、3波長(630,645,663nm)での連立方程式を用いてクロロフィルaの濃度を求める場合は
Chl.a (mg Chl.a ・dm-3)=(11.64 E663 - 2.16 E645 + 0.10 E630)x
カロチノイド(緑藻・藍藻類が優占の場合)
カロチノイド (mg Cal. ・dm-3)=(4.0 E480)x
カロチノイド(珪藻・黄色鞭毛藻、過鞭毛藻類が優占の場合)
カロチノイド (mg Cal. ・dm-3)=(10.0 E480)x

ただし、E663, E645, E630とは、663 nm, 645 nm, 630 nmにおける吸光度から750 nmにおける吸光度を引いた値である。この750nmの吸光度を差し引くのは懸濁物質による光の散乱の影響を差し引くためである。E480については750nmの吸光度の3倍量を差し引いて求める。環境水中のクロロフィル量は少ないので通常はμg Chl. ・dm-3単位で表示する。

吸光光度法を用いた多成分同時定量

多成分定量の連立方程式

ここで3波長(630,645,663nm)を用いたクロロフィルa,b,cの定量に適用してみると
クロロフィルaは Chl.a(mg Chl.a・dm-3)=(11.64A663 - 2.16A645 + 0.10A630)x
クロロフィルbは Chl.b(mg Chl.b・dm-3)=(20.97A645 - 3.94A663 - 3.66A630)x
クロロフィルcは Chl.c(mg Chl.c・dm-3)=(54.22A630 - 14.81A645 - 5.53A663)x
なお本法でのクロロフィルb,cは参考値である。dm-3は1L(リッター)