遷移元素1

第8章【遷移元素】 遷移元素とは長周期表で21Scから29Cuまでの元素とその下にある元素を いいます。 典型元素がs,p電子が規則的に変化していくのに対して遷移元素ではd軌道の電子が 増減します。 遷移元素は錯体を作りやすく遷移元素の化学=錯体の化学 ともいえます。

【錯体化学】
錯体とはある原子(イオン)を中心にして他のイオンあるいは分子が配位結合*し 規則的な配置をとるものです。中心原子に配位しているものを配位子(ligand)と よびます。錯体では中心元素はルイス酸** 配位子はルイス塩基*** となります。

* 配位結合とは電子対の供与により生ずる結合をいいます。  H:Hではそれぞれの水素原子が電子を持ち寄って結合を作ります。例えば有名な [Cu(NH3)42+ テトラアンミン錯イオンでのアンモニアと銅の結合は  :NH3 アンモニアの電子対が一方的にCuに与えられ Cu:NH3となって います。

** ルイス酸とは電子対の受用体(受け取る側) 上の例ではCu
*** ルイス塩基とは電子対の供与体(与える側) 上の例ではNH3
  テトラアンミン錯イオンは下のような形ですが

   3HN−−−−−NH3  アンモニアの代わりにエチレンジアミン
    /     /    2HN-CH2-CH2-NH2 を用いると
   / Cu  /       ・・       ・・
  /     /
3HN−−−−−NH3

     /2HN−−−−−NH2  左のように蟹の鋏のように
    C  /     / \   銅を挟み込みます。
    /    / Cu  /   C   これをキレ−ト
   C /     /  C/   とよんでいます。
   2HN−−−−−NH2/     アンモニアのような
単座配位子に比べてエチレンジアミンのような二座配位子はより安定な 錯化合物をつくります。
この様な2座以上で配位するChelateはギリシャ語の”カニのはさみ”に由来して います。カニのはさみで金属を挟んでいる様子がわかると思います。 エチレンジアミンの窒素についているHが酢酸に置き換わったのが エチレンジアミン四酢酸(EDTA)と呼ばれるものです。
HOOCH2C        CH2COOH
      \       /
       NCH2CH2N         EDTA
      /       \
HOOCH2C        CH2COOH
EDTAは水に溶けて酢酸のHが解離し、酸素が配位元素として働きます。 このEDTAは2つの窒素とあわせ6つの配位子をもつ多座配位子です。
水には硬水や軟水があり、温泉(硬水の場合)などで石けんを使うと泡が立たないの がよく知られています。これはカルシウムイオンと石けんが結合して水に不溶性の ものになるためですが、これはよくご存知のことだとと思います。

さて この硬度ですが水の中のカルシウムイオンやマグネシウムイオンの量を 基にして表しています。
カルシウムイオン(Ca2+)が炭酸カルシウム(CaCO3)に換算して 1ppmあると硬度が1となります。(これはアメリカや日本の表示で ドイツでは17.85ppmを1度と言っているのでご注意下さい。 またマグネシウムもカルシウムの相当量に換算します)。
硬水はこのカルシウムやマグネシウムが多いもので
357ppm (ドイツ硬度20度)以上を硬水
178.5ppm(ドイツ硬度10度)以下を軟水
硬水と軟水との間を中間水と区別しています。
日本の水道水は軟水で、ミネラルウオ−タ−として売られているのも 実際はミネラル分の少ない軟水です。最近は輸入ミネラルウオ−タ−が よく見られるようになりました。また海外旅行をして水に当たるのも ヨ−ロッパなどで多い硬水を飲んで体が不調になることも一因のようです。 蒸留水は硬度0ですが水としておいしいものではありません。一時、研究室で ためしにこの蒸留水でコ−ヒ−をいれていました。

適度な硬度と温度、炭酸ガスの存在等・・が水をおいしくしているようです。
この硬度滴定は先ほどのEDTA溶液を用いて行います。 水の中のCa2+やMg2+はEDTAと結合して1:1の錯体をつくります。 指示薬としてEBTという試薬を加えますが、滴定しているEDTAが不足 の間は、Ca−EBTの結合がありこれが赤い色をしているのですが 結合力の強いEDTAが入ってくると、EBTは追い出され、試薬本来の 青い色となります。これでCa+Mgの量が測定できるわけです。


講義項目