放射能の基礎知識

環境放射能

放射能の単位

最近は原子力とか放射化学は環境問題の視点から斜陽分野となってきています。代わってバイオや環境分野が勢力を大きく のばしています。いくら環境にやさしいとか省資源・省エネルギ− といっても我々より快適な生活のため多くのエネルギ−を消費しています。環境を意識しないでくても快適さを求めれば求めるほどエネルギ−を消費していくのです。そのエネルギーのかなりの部分は原子力発電で賄われています。
さて前置きはその位にして
まず「キュリ−」から「ベクレル」へ これ何のことかわかりますか?
キュリ−もベクレルもノ−ベル賞を授賞した有名な学者です。 Ci(キュリ−)はかつての放射能の単位でラジウムの発見で有名なキュリ−夫妻 にちなみ約1gのラジウム(226Ra 1600y α 4.602MeV(5.6%) 4.784MeV(94.4%))の放射能(1Ci = 3.7x1010 Bq)を元にして決められたのですが、SI国際単位系の浸透で使われなくなり、代わって放射能の発見者ベクレル(Bq)が使われるようになりました。1Bqとは1崩壊/秒の放射能を表しています。

放射線の単位 照射線量(X)はX線γ線が空気を電離する能力。クーロン/kgで表されます。従来はレントゲンRが用いられていました。その換算は1C/kg=3876Rとなります。
カーマ(KERMA:Kinetic Energy of particles Released in MAterial):光子や中性子などの非荷電粒子が物質にエネルギーを与える場合、第一段階では相互作用により電子や荷電粒子のエネルギーへ移行する。次いでその荷電粒子が物質にエネルギーを与える。カーマKはこの第1段階に着目した量で、非荷電性の放射線のみに適用されます。単位はグレイ(Gy) =J/kg。
カーマを記す場合は対象物質を明記します。空気カーマの場合は照射線量に代わり用いられています。

吸収線量
吸収線量Dはある任意の物質中の単位質量あたりの放射線により付与されたエネルギーの平均値を意味する。放射線の吸収線量 グレイ(Gy) =J/kg。空気吸収線量や組織吸収線量など物質の種類を明示する。空気は平均で約34電子ボルトのエネルギーで電離しイオン対を一組作るので、照射線量1 C/kgのときの空気の吸収線量は約34 J/kgとなる。すなわち照射線量 1 R の放射線の吸収線量はおよそ 2.58×10-4×34 Gy = 8.77 mGy となります。物理的な量はここまでです。

放射線防護に用いられる線量
線量当量 シ−ベルト(Sv)があります。 線量当量は放射線の生物学的効果を表す量で 線量当量をDE、吸収線量をDとすると  DE = D*Q*Nと表されます。 QとNは修正係数です。
放射線量を測定した時に表示されるシーベルトは通常は毎時が多く使われます。バックグラウンドレベルの0.1μSv/hは1年間では8766時間故、876.6μSv/y=0.8766mSv/yです。
1mSv/h=1000μSv/h=876.6mSv/y。このシーベルトという単位は人体防護を目的としたものであり、純粋な科学的単位ではありません。

放射能

世間からは忌み嫌われる「放射能」ですが「放射能」とは放射線を発射する能力のことで放射能をもつ物質を「放射性物質」と呼びます。 これが混同され「放射能」=「放射性物質」を意味するようになっています。 「放射線」放射性壊変によって放出される粒子(光子)のビ−ムで、α、β、γ 線などがあります。
広い意味では射出される電磁波、すなわち宇宙線やγ線からラジオ波まで放射線です。 放射能と関連する放射線にはαβγがありそれにX線も加わりますが α線は高速で運動するヘリウムの原子核 β-線は高速のe-(電子)の流れ、β-はe+(陽電子)の流れ γ線とX線は電磁波です。

放射壊変の種類

α壊変
α壊変は高速のヘリウムの原子核であることはラザフォ−ドの実験でも 紹介しました。226Ra(ラジウム)から放出されるα線は4.777MeVの エネルギ−を有しますがこれは速度1.5x107m/sで、 気体の運動の式から0℃で1.3x103m/sとなり、なんと1万倍の高速 であることがわかります。このα壊変で質量数は4減り、原子番号は2減ります。 こんな高速の粒子ですがわずか3cmの空気の層で止まってしまいます。 でも人体に対する影響はX線やγ線の20倍程度もあります。

空気中の飛程は(R cm, E MeVで) R=0.323 E(3/2)
エレクトロンボルト(eV)はエネルギーの単位で1 V の電位差がある自由空間内で電子 1 つが得るエネルギーをさす。1eV = 1.60218x10-19J (電子の電荷は1.60217733x10-19C) 1eVの平均運動エネルギーをもつ気体の温度は11604 K  1000nm=1.986447x10-19J = 1.2398eV
β壊変は核からの高速の電子の流れです。この電子は原子核を回っている電子ではなく 原子核の中で  n = p+ + e- の変化が起こって出ています。 この為 β壊変では質量数の変化はなく原子番号が1増えます。 2MeVのβ線は約1g/cm2のアルミニウムで遮蔽されます。アルミニウムは 密度が2.7g/cm3ですから、約3.7mm厚のアルミニウム板でOKです。水の場合は約1cmとなります.
最大飛程は(Rg/cm2、EmaxMeVで)R = 0.542*Emax - 0.133  (但しEmax > 0.8MeV)
R = 0.407*Emax1.38 (但し0.8>Emax > 0.15MeV) .14Cのβ線エネルギーは0.156MeVですからR=0.0313 gcm-2つまり水中では0.3mm、空気中では24cm程度で停止してしまいます. これは物質中を最大エネルギーのβ-線が直進する場合に相当しています。
α線と違いβ線のエネルギ−は一定ではありません。それじゃエネルギ−は 保存されないのか?となりますが

縦軸はβ線の粒子数,横軸はエネルギ−です。
エネルギ−の不足分はν(ニュトリノ)が補っています。

β+壊変

電子と同じ質量を持ち、電荷が+の陽電子を放出する壊変で原子核内の 陽子が中性子に変化することにより起こります。
     p+ = n + e+
β-壊変と逆で原子番号は1だけ減少します。この際もν(中性微子ニュ−トリノ) が放出されます。 出てきたe+は反物質ですから電子と結合して
 e+ + e- = 2γ
となり0.511MeVのγ線がそれぞれ反対方向に飛び出します。 医学分野で使われているPET(ポジトロン エミッション トモグラフィ−) はこのβ+壊変するRI(ラジオアイソト−プ)を体内に注入することでγ線の 検出で画像を得ています。

軌道電子捕獲(EC) エレクトロン キャプチャ−

原子核が核外電子(多くはK殻電子)を取り込む壊変で原子番号が1だけ減少します。 β+崩壊と表裏一体の壊変といえます。 核内に取り込まれた電子は
 e- + p+ = n
 となります。 EC壊変で失われたK殻電子を埋めるためL殻などから電子が落ちてきて その結果X線(特性X線)が放出されます。 L殻の電子を埋めるため更にM殻などから電子が落ちてきて、まるで雪崩 の様な様相を呈します。

γ壊変

X線や可視・紫外線などは核外電子のエネルギ−準位間の遷移により放出されるのですがγ線は原子核のエネルギ−準位間遷移により放出されます。質量数にも原子番号にも 変化はありません。
γ線の遮蔽60Co γ線 1.173MeV,1.333MeVを鉛で遮蔽する場合半価層(半分の強度になる厚さ)は1.3cm、1/10価層は4.2cm、鉄を使った場合は2.6cmと7.7cm、コンクリートなら8.7cmと25.3cmとなる. 1.33MeVのγ線の遮蔽には(1/1000にするとして)12cm程度の鉛が必要です。

放射壊変の速度

放射壊変する核種は不安定な同位体(安定な核種と比べ中性子の数が異なる)で 上に挙げたαβγ等の壊変をするわけですがその速度には規則性があります。 どの原子核が次に壊変するかはわかりませんが、多くの原子核があり(N個) 単位時間にいくつ壊変するかは統計的に予測できます。 つまり 壊変速度は個数Nに比例します。
上式を積分するととなります。 N0はt=0の母体核の個数です。
NがN0の半分になる時間を半減期t½
と呼んでいます。t½ = 0.639/λの関係があります。
例えば半減期1年の核種が1024(2の10乗)個あれば、1年後には512 個に2年後には256個に・・・10年後には1個になるわけです。 実際の半減期は1010年からp秒(10-12sec)オ−ダ−以下まで極端に幅広い領域に またがっています。

放射平衡

放射性核種が壊変し、新たな放射性核種が生じるとき、生じた核種を娘核種といい、元の核種を親核種と呼ぶ.親核種の半減期をT1、娘核種の半減期をT2とするときT1とT2の大きさで過渡平衡と永続平衡、放射平衡が成立しない場合に分かれる.親・娘両核種とも放射性の場合、それぞれの原子数をN1、N2、壊変定数をλ1、λ2とすると
の式が成り立ちます.積分するとが得られます.この式が放射平衡の式となるわけです.
過渡平衡 さてT1 > T2の十分に時間が経過すると(10T2程度)かっこ内の第2項目は無視できるので近似的にが成り立ちます.このとき娘核種は見かけ上親核種と同一の半減期で壊変します.これを過渡平衡(transient equilibrium)といいます.

永続平衡 T1 >> T2の場合は十分時間が経過するとの関係が成立する.この平衡を永続平衡という.永続平衡にある親・娘核種の放射能は等しくなる.

放射平衡が成立しない場合 T1 < T2の場合は親核種が先に消滅するので放射平衡は成立しない.娘核種が極大に達する時間はとなる.

「何故この様な形式の壊変が起こるのか?」 下の図を見て下さい。


ざっとこんな所です。これは原子核の全結合エネルギ−が経験的に
B(MeV)=14.0A − 13.1A(2/3) − 0.585Z(Z-1)A(-1/3)   − 18.1(A - 2Z)2・A-1 + δA-1
と表される(ワイゼッカ−の質量式)がZの2次式となることより説明が できます。
δはZ(陽子数)及び中性子数(N)が共に偶数だと+132 共に奇数だと-132、一方のみが奇数(つまりAが奇数)の時0となる 定数です。上の例は質量数75の奇数ですから放物線は1つです。

質量数が偶数だと奇−奇、偶−偶の組み合わせが出来上がり、放物線が 2本あります。崩壊はこの上下2本の放物線の間を行き来して起こります。


核反応

原子核にα線(Heの原子核)や陽子(P、水素の原子核)、重陽子、中性子(n) を当てることで人工的に元素の変換ができます。 この人工の元素変換で錬金術の昔からの夢が一応達成されたわけです。 この最初の人工核変換は1919年 ラザフォ−ドによりなされました。
14N + 4He → 17O + 1H 窒素原子のα線照射です。
  以前に紹介した天然の核反応にT(三重水素)や14Cがあります。   太陽等から来る宇宙線が元になり
14N + n → 3H (T) + 12Cや
14N + n → H+ (p) + 14C
反応がおこります。核反応の代表はなんと言ってもU(ウラン)の核分裂です。何故原子炉からエネルギ−が取り出せるか考えてみます。

熱中性子炉

多くの原子炉では235Uを燃料に使っています。235Uはウランの 中で0.72%しか存在しません。ウランの99.275%が238Uなのです。
さて核分裂ですが、235Uに中性子が当たり原子核が分裂を起こすといくつかの中性子が出てきます。
235U + 1n(熱中性子) → [236U → 144Ba 90Kr + 21n(高速中性子) + γ
この中性子は2MeV程度のエネルギ−をもち、高速中性子と呼ばれています。 この中性子がさらにUにあたって核分裂を続けるように考えられますが、じつはこの高速中性子は余り235Uを分裂させるの力は少ないのです。この高速中性子を減速し1/40eV程度にまですると約580倍もウランを分裂させる能力が増えるのです。このため連鎖反応が起こるのです。ところが2MeVから1/40eVまで減速させる途中の段階では共存する238Uが中性子を吸収してγ線を出すため、すばやく効率よく中性子のエネルギ−を奪うため水や重水、黒鉛等が減速剤として用いられています。

高速炉

235 Uの濃縮度を上げると、 235Uは高速中性子でも核分裂を起こし(核反応断面積 は小さいが)連鎖反応が起こります。このように高速中性子で連鎖反応を起こすタイプ の原子炉を高速炉と呼んでいます。 高速炉で 238Uや232Thを反射材として用いると燃料の235Uに吸収されずに反射材に達した中性子と反射材が反応し239Puや233Uが得られます。 例えば
238U(n,γ)239U β→ 239Np β→ 239Pu

このように原子炉を運転しながら同時に燃料を作る炉を転換炉といい 消費された以上の燃料を作り出すのを増殖炉と呼んでいます。 増殖炉でできる239Puは新たな核燃料として使用できますが プルトニウムの危険性がウランに比べて格段に大きく社会問題になっている のは御存知だと思います。通常の燃料は3-5%の235Uを含んだウラニウム238U)を用います。プルサーマル燃料,MOX燃料(Mixed Oxied Fuelウラン・プルトニウム混合酸化燃料),はこのプルトニウム(4-9%)とウラニウム(238U)を混合して燃料とする形式のものです。

ウランの濃縮は、ウラン235の濃度を高め、ウラン238の濃度を下げるための物理的なプロセスです。ウラン235原子の質量がウラン238原子より約1.2%軽(235/238=0.987)いという性質より、235U原子が、238U原子より小さく軽いために多孔質媒体中をより速やかに通過し得るという性質を利用しています。現在最も広く利用されているガス拡散法では、ウランをフッ化物にしてガス化し、(UF6)多孔質媒体中を通過させることにより濃縮します。

放射線の強さと線量
    
身近な放射線 線量(Sv) 自然放射線(宇宙と大地から) 線量(Sv)
CRTのTV表面 1μSv/h(最近はほとんどない) 日本の平均 0.75mSv/年
太平洋横断の飛行機 40μSv/回 神奈川県 1mSv/年
タバコ(20本/日) 0.18mSv/年 熊本市 0.76mSv/年
胸部X線撮影 1mSv/回 岐阜県 1.13mSv/年
胃・歯部X線撮影 15〜50mSv/回 中国広東省 3mSv/年
一般人の線量限度 1mSv/年(医療は除く) ブラジルのガラバリ 6.4mSv/年
職業人の線量限度 50mSv/年,100mSv/5年
女子5mSv/3月
インドのケララ 16mSv/年
癌治療(局部) 2Sv/回 1人あたりの自然放射線
(世界平均)
2.4mSv/年(宇宙から0.38,大地から0.46,
食物から0.24,ラドン等の吸入1.3)
半致死線量 4Sv/回 断層撮影(CTスキャン) 6.9mSv
致死線量 7Sv/回 胃のX線集団検診 0.6mSv
広島爆心地 100Sv 管理区域の規制値 1.3mSv/3月
スペースシャトル 1.0mSv/日
(一般人の年間許容量を1日で浴びる量)

身近にある放射能 Bq 身近にある放射能 Bq
1Mトン水素爆弾 3.7x1021Bq    
原子炉 3.7x10 19 Bq 癌治療装置 1.9x10 14 Bq
増富温泉(山梨) 11100   Bq/l 60kgの人体 7400   Bq
輸入食品の規制値 370   Bq/kg 土壌 155〜1025Bq/kg
ホ−レン草 89〜222 Bq/kg サラダ油 181 Bq/l
尿 111 Bq/l 牛乳 52 Bq/l
海水 13 Bq/l 河川水 3.7 Bq/l
水道水 0.74 Bq/l 核実験の総放射能 5x109Ci(約2x1020Bq)
ここにあげた値は目安と考えて下さい。

原子炉の事故とセシウム137
1986年当時のソ連ウクライナのチェルノブイリ原子力発電所において極めて重大な事故が発生し、原子炉内部の放射性物質が多量に放出された。 この図は日本で観測されたセシウム137の降下物で、1986年に大きなピークがみられる。この事故で半径30kmに住んでいた約12万人が避難した。 この時放出された放射性物質は広島・長崎の原子爆弾100個分に相当すると見積もられている。この事故では急性の障害で31名が亡くなり、2億5000万人が寿命が短くなる放射線レベルにさらされたと見積もられる。発電所から60kmに住んでいた15万人がメルトダウンののち、強制移住させられた。チェルノブイリの周辺は地球上で最も放射能が強い場所となっている。

放射線作業の従事者は線量計等で過去の被爆線量を記録しています。 胃の検査で、発砲剤と硫酸バリウムを飲んで台の上で転げ回りますが、かなり この際X線を浴びます。この様なX線は全く個人の被爆線量に加算されていません。 医院に行っても所により安易にX線検査を行うところもあります。 癌などの検査の場合はその危険性と癌とを比べ、敢えてX線を当てている のでしょうが、それでも非常に不思議に思っています。最近(2004年)海外の調査でも日本の医療検査による放射線の問題が報じられていました。

それはともかく
天然のK(カリウム)のうち放射性の40Kは0.0117%を占め、半減期12億8000万年です。天然のカリウム 1kgをとると 約30000 Bqの放射能があります。89%が40Caに変わり11%が40Arに変わる性質を持っています。 人体中(60kg)の放射能は半分以上この40K(約4000Bq)のせいで、ついで14C(2500Bq)が占めていると思います。


天然の放射性核種

放射能は原子炉からの連想で、全て人がつくった如く見そうになりますが 太陽が巨大な核融合炉であることを考えても判るように地球や太陽そして 宇宙の誕生時には巨大なエネルギ−の塊、放射能の塊だったでしょう。 地球が誕生して約50億年、未だにその残骸は残っています。 これが天然に存在する放射性核種です。
天然には壊変系列を作る放射性核種と系列を作らない核種が知られています。

放射性核種の速度則より10半減期の後では元の1024分の1、 20半減期では100万分の1(10-6)、30半減期後では10億分の1(10-9)、 40半減期では1兆分の1(10-12)で半減期の短い核種はたちどころに消えてしまいます。100万kWの軽水炉を運転すると3.1x(1018)のヨウ素131が生成します。 これが事故ですべて放出されたとして、1年弱で3.1x106bqまで減少します。一方ヨウ素129は100万KWの軽水炉1年運転後で5x1010bqで、半減期1570万年より1年後も減少しません。この様に環境への影響は半減期も考えて判断する必要があります。

系列を作る放射性核種

この壊変系列をつくる放射性核種はα崩壊を含むためその質量数Aが4の倍数に 関連しています。
[4n系列]  これはトリウム系列といいます。
親がトリウム(232Th)です。
  232Th α→ 228Ra β→ 228Ac β→ 228Th α→ 224Ra α→ 220Rn α→ 216Po β→ 216At α→ 212Pb →・・208Pb
トリウム(232)の半減期は140億年で地球の年齢より大きい値です。トリウムはα線を放出{3.953MeV(24%)、4.010MeV(76%)}し、崩壊する。トリウムはモナズ石の中に多く含まれ、自然放射線の多い地域ケララ、ガラパリの放射線はモナズ石のトリウムが原因です。ラジウムが原因のラムサール等があります。

[4n+1系列]  これはネプツニウム系列といいます。
241Puが出発なのですが 途中の237Npが半減期が最長で214万年であることから名付けられています。 214万年と地球の歴史からはみて短命で天然には存在しません。

[4n+2系列]  これはウラン系列と呼ばれています。
親が238Uで その半減期が45億年と地球の年と同程度なため天然に存在しています。
238U α→ 234Th β→ 234Pa β→ 234U α→ 230Th α→ 226Ra α→ 222Rn α→ 218Po β→ 218At β→ 218Rn →・・206Pb

[4n+3系列]  これはアクチニウム系列と呼ばれています。
235Uが親です。 半減期は7億1千万年少し短命ですが天然に存在します。
235U α→ 231Th β→ 231Pa α→ 227Ac β→ 227Th α→ 223Tr β→ 223Ra α→ 219Rn α→ 215Po β→ 215At →・・207Pb   全ての系列は最後に鉛に落ちつきます。

系列を作らない放射性核種

大気上層で宇宙線により絶えず作られているトリチウム(3H)や14Cが有名です。 トリチウムは半減期12.3年、14Cは5730年と短いものです。
また地球誕生時から存在したものとして40K(半減期12.8億年,0.0117%)、 特に寿命の長いものとして
87Rb(半減期480億年、天然のRbの内27.8%)
147Sm(半減期1060億年,天然のSmの内15.1%)
148Sm(半減期8000兆年,天然のSmの内11.3%)
115In(半減期510兆年,天然のInの内95.7%)
113Cd(半減期9000兆年,天然のCdの内12.2%)
187Re(半減期400億年,天然のReの内62.6%)
144Nd(半減期2100兆年、天然のNdの内23.8%)
があります。これらは放射性というより安定な元素と考えた方が 正しいと思います。

オクロ(Oklo)鉱山の天然原子炉

天然の235Uの存在比は0.72%である.1972年フランスでウラン試料中の235Uの同位体存在比が異常に低いものが見つかった.アフリカのオクロ(Oklo)鉱山産ののウランで235Uの存在比が0.44%まで低下していた.このウラン鉱山にはNdやSmなどの核分裂生成物が見つかった.この原因は約17億年前、このウラン鉱床で235Uが燃えた(核分裂を起こした)ためと考えられている.17億年前は235Uの存在比は現在の5倍(約3%)あり、濃縮ウラン並の235Uが存在していたことが理由と考えられる.

年代測定

放射性核種とその生成核種や安定同位体を含む同位体存在比を測定することで 地質学的試料や考古学的試料の年代を知ることができます。 例えば系列をつくる天然の放射性核種は最後に208Pb,206Pb,207Pb となります。岩石中のウラン、トリウム,鉛の同位体存在比を測定することで 岩石のできた時代を推定することが可能となります。 また系列を作らない放射性核種、例えば40K−40Arの存在量より推定することも できます。 87Rb−87Sr法も使われています。

14N + n → 3H (T) + 12Cや
14N + n → H+ (p) + 14C
考古学的試料では14Cが絶えず大気上層で作られ、大気中の存在比が0.03% と比較的一定で(比放射能は炭素1g当たり15壊変/分=250Bq/kg-C) 程度でCO2の循環で海水中や植物・動物の体内に取り込まれています。 動植物の死と共に14C炭素の循環の鎖は絶たれ、5730年の半減期で減衰して いきます。この方法は数万年前までの遺物の年代測定に適用できます。 この方法は過去の14C濃度が一定であった必要がありますが、過去の変動による 補正が必要なこともあります。

何故ウランが核分裂で水素が核融合なのか?

原子力発電はウランの核分裂で、太陽は水素の核融合でエネルギ−が発生しているのは 良く知られています。さてそれはなぜかを考えてみます。
原子番号Z、質量数Aの原子核は陽子Z個と中性子N(=A-Z)個から出来ています。ここで陽子の質量をmp、中性子の質量をmnとしてその核種の質量をmAとすると ΔmA=(Zmp +Nmn) − mAとなり質量は保存されません。 この消えたΔmAはA個の核子が集まって原子核を作るさいの安定エネルギ−と なって形を変えているのです。
質量=エネルギ− の関係はアインシュタインの式  ΔE=ΔmC2で有名です。 核子1個当たりの安定化エネルギ−はΔE/Aとなりますが

少し図が不連続ですが、核子1個当たりの安定化エネルギ−はA=55 付近が最大(鉄,Feのあたり)となります。
この図から、質量数の大きいウランが分裂してより安定な核種が生成し、安定化 エネルギ−の差に相当するエネルギ−が得られることがわかると思います。 また同時に質量数の少ない核種同士が核融合する際も同様のエネルギ−が 得られるわけです。核融合の方がエネルギ−が大きいこともこの図からわかります。

ラジオアイソト−プの応用

化学の領域ではRIはトレ−サ−として化学反応や微量化学種の挙動の研究に 使われています。トレ−サ−とは分子や原子の一部をRIで標識し、その動きを 追うもので、動物の行動をトレ−スするために取り付ける小型発信機と同じものと 考えれば容易に理解できます。 その他RIを用いた測定機として非破壊検査機、厚み計、密度計、水分計 ECDガスクロマトグラフ・・等があります。 PET(ポジトロン エミッション トモグラフィ−)に代表されるように 医学・生物学の分野でも利用が盛んです。

主な放射性物質

3H 12.33y β- 0.0186MeV 14C 5730y β- 0.156MeV 32P 14.26d β- 1.711MeV
40K 1.28X109y β-1.33MeV(89%) γ1.461MeV(11%) 60Co 5.271y β- 0.318MeV γ 1.173MeV,1.333MeV 63Ni 100.1y β- 0.0669MeV
90Sr 28.78y β- 0.564MeV 131I 8.021d β- 0.606MeV(89.5%) γ0.364MeV(81.7%) →131mXe 131mXe, 11.77d IT(100%) γ0.164MeV
137Cs 30.07y β- 0.514MeV 1.176MeV→137mBa 137mBa 2.552m IT γ 0.662MeV 222Rn 3.824d α 5.490MeV(99.9%)
226Ra 1600y α 4.602MeV(5.6%) 4.784MeV(94.4%)

放射性ヨウ素と壊変図
原子炉の事故が起こったとき気体になりやすいヨウ素131I,132I(t1/2=2.3h),133I(t1/2=20.8h)が広がることが知られており、これらのヨウ素は食物や呼吸を通して体の中に入っていきます。ヨウ素は甲状腺に集まる性質があり、体の中のヨウ素の量が少ないほどその割合が大きくなります。甲状腺への集中を防ぐため事故直後に、成人の場合、ヨウ素剤130mg(ヨウ素として100mg)を1日1回、必要に応じ3日間から7日間連続して飲みます。子供は成人の半分の量を投与することになっています。日本人は海産物から摂取するヨウ素量が多く、欧米人に比べ事故時の放射性ヨウ素の甲状腺への集中度は低くなると言われています。
ここには核分裂生成物のうち、代表的な2種のみの壊変図式を表しています。たとえばヨウ素の場合、約90%のヨウ素131は0.606MeVのβ線を放出し、約80%が0.364MeV のγ線になるということを示しています。