環境放射能
放射能の単位
最近は原子力とか放射化学は環境問題の視点から斜陽分野となってきています。代わってバイオや環境分野が勢力を大きく
のばしています。いくら環境にやさしいとか省資源・省エネルギ−
といっても我々より快適な生活のため多くのエネルギ−を消費しています。環境を意識しないでくても快適さを求めれば求めるほどエネルギ−を消費していくのです。そのエネルギーのかなりの部分は原子力発電で賄われています。
さて前置きはその位にして
まず「キュリ−」から「ベクレル」へ これ何のことかわかりますか?
キュリ−もベクレルもノ−ベル賞を授賞した有名な学者です。
Ci(キュリ−)はかつての放射能の単位でラジウムの発見で有名なキュリ−夫妻
にちなみ約1gのラジウム(226Ra 1600y α 4.602MeV(5.6%) 4.784MeV(94.4%))の放射能(1Ci = 3.7x1010 Bq)を元にして決められたのですが、SI国際単位系の浸透で使われなくなり、代わって放射能の発見者ベクレル(Bq)が使われるようになりました。1Bqとは1崩壊/秒の放射能を表しています。
放射線の単位
照射線量(X)はX線γ線が空気を電離する能力。クーロン/kgで表されます。従来はレントゲンRが用いられていました。その換算は1C/kg=3876Rとなります。
カーマ(KERMA:Kinetic Energy of particles Released in MAterial):光子や中性子などの非荷電粒子が物質にエネルギーを与える場合、第一段階では相互作用により電子や荷電粒子のエネルギーへ移行する。次いでその荷電粒子が物質にエネルギーを与える。カーマKはこの第1段階に着目した量で、非荷電性の放射線のみに適用されます。単位はグレイ(Gy) =J/kg。
カーマを記す場合は対象物質を明記します。空気カーマの場合は照射線量に代わり用いられています。
吸収線量
吸収線量Dはある任意の物質中の単位質量あたりの放射線により付与されたエネルギーの平均値を意味する。放射線の吸収線量 グレイ(Gy) =J/kg。空気吸収線量や組織吸収線量など物質の種類を明示する。空気は平均で約34電子ボルトのエネルギーで電離しイオン対を一組作るので、照射線量1 C/kgのときの空気の吸収線量は約34 J/kgとなる。すなわち照射線量 1 R の放射線の吸収線量はおよそ 2.58×10-4×34 Gy = 8.77 mGy となります。物理的な量はここまでです。
放射線防護に用いられる線量
線量当量 シ−ベルト(Sv)があります。
線量当量は放射線の生物学的効果を表す量で
線量当量をDE、吸収線量をDとすると DE = D*Q*Nと表されます。
QとNは修正係数です。
放射線量を測定した時に表示されるシーベルトは通常は毎時が多く使われます。バックグラウンドレベルの0.1μSv/hは1年間では8766時間故、876.6μSv/y=0.8766mSv/yです。
1mSv/h=1000μSv/h=876.6mSv/y。このシーベルトという単位は人体防護を目的としたものであり、純粋な科学的単位ではありません。
放射壊変の種類
α壊変
α壊変は高速のヘリウムの原子核であることはラザフォ−ドの実験でも
紹介しました。226Ra(ラジウム)から放出されるα線は4.777MeVの
エネルギ−を有しますがこれは速度1.5x107m/sで、
気体の運動の式から0℃で1.3x103m/sとなり、なんと1万倍の高速
であることがわかります。このα壊変で質量数は4減り、原子番号は2減ります。
こんな高速の粒子ですがわずか3cmの空気の層で止まってしまいます。
でも人体に対する影響はX線やγ線の20倍程度もあります。
空気中の飛程は(R cm, E MeVで) R=0.323 E(3/2)
エレクトロンボルト(eV)はエネルギーの単位で1 V の電位差がある自由空間内で電子 1 つが得るエネルギーをさす。1eV = 1.60218x10-19J (電子の電荷は1.60217733x10-19C) 1eVの平均運動エネルギーをもつ気体の温度は11604 K 1000nm=1.986447x10-19J = 1.2398eV
β壊変は核からの高速の電子の流れです。この電子は原子核を回っている電子ではなく
原子核の中で n = p+ + e- の変化が起こって出ています。
この為 β壊変では質量数の変化はなく原子番号が1増えます。
2MeVのβ線は約1g/cm2のアルミニウムで遮蔽されます。アルミニウムは
密度が2.7g/cm3ですから、約3.7mm厚のアルミニウム板でOKです。水の場合は約1cmとなります.
最大飛程は(Rg/cm2、EmaxMeVで)R = 0.542*Emax - 0.133 (但しEmax > 0.8MeV)
R = 0.407*Emax1.38 (但し0.8>Emax > 0.15MeV)
.14Cのβ線エネルギーは0.156MeVですからR=0.0313 gcm-2つまり水中では0.3mm、空気中では24cm程度で停止してしまいます.
これは物質中を最大エネルギーのβ-線が直進する場合に相当しています。
α線と違いβ線のエネルギ−は一定ではありません。それじゃエネルギ−は
保存されないのか?となりますが
縦軸はβ線の粒子数,横軸はエネルギ−です。
エネルギ−の不足分はν(ニュトリノ)が補っています。
壊変速度は個数Nに比例します。
となります。
N0はt=0の母体核の個数です。
の式が成り立ちます.積分すると
が得られます.この式が放射平衡の式となるわけです.
が成り立ちます.このとき娘核種は見かけ上親核種と同一の半減期で壊変します.これを過渡平衡(transient equilibrium)といいます.
の関係が成立する.この平衡を永続平衡という.永続平衡にある親・娘核種の放射能は等しくなる.
となる.
「何故この様な形式の壊変が起こるのか?」 下の図を見て下さい。


ざっとこんな所です。これは原子核の全結合エネルギ−が経験的に
B(MeV)=14.0A − 13.1A(2/3) − 0.585Z(Z-1)A(-1/3)
− 18.1(A - 2Z)2・A-1 + δA-1
と表される(ワイゼッカ−の質量式)がZの2次式となることより説明が
できます。
δはZ(陽子数)及び中性子数(N)が共に偶数だと+132
共に奇数だと-132、一方のみが奇数(つまりAが奇数)の時0となる
定数です。上の例は質量数75の奇数ですから放物線は1つです。
質量数が偶数だと奇−奇、偶−偶の組み合わせが出来上がり、放物線が 2本あります。崩壊はこの上下2本の放物線の間を行き来して起こります。
ウランの濃縮は、ウラン235の濃度を高め、ウラン238の濃度を下げるための物理的なプロセスです。ウラン235原子の質量がウラン238原子より約1.2%軽(235/238=0.987)いという性質より、235U原子が、238U原子より小さく軽いために多孔質媒体中をより速やかに通過し得るという性質を利用しています。現在最も広く利用されているガス拡散法では、ウランをフッ化物にしてガス化し、(UF6)多孔質媒体中を通過させることにより濃縮します。
| 身近な放射線 | 線量(Sv) | 自然放射線(宇宙と大地から) | 線量(Sv) |
| CRTのTV表面 | 1μSv/h(最近はほとんどない) | 日本の平均 | 0.75mSv/年 |
| 太平洋横断の飛行機 | 40μSv/回 | 神奈川県 | 1mSv/年 |
| タバコ(20本/日) | 0.18mSv/年 | 熊本市 | 0.76mSv/年 |
| 胸部X線撮影 | 1mSv/回 | 岐阜県 | 1.13mSv/年 |
| 胃・歯部X線撮影 | 15〜50mSv/回 | 中国広東省 | 3mSv/年 |
| 一般人の線量限度 | 1mSv/年(医療は除く) | ブラジルのガラバリ | 6.4mSv/年 |
| 職業人の線量限度 |
50mSv/年,100mSv/5年 女子5mSv/3月 |
インドのケララ | 16mSv/年 |
| 癌治療(局部) | 2Sv/回 |
1人あたりの自然放射線 (世界平均) |
2.4mSv/年(宇宙から0.38,大地から0.46, 食物から0.24,ラドン等の吸入1.3) |
| 半致死線量 | 4Sv/回 | 断層撮影(CTスキャン) | 6.9mSv |
| 致死線量 | 7Sv/回 | 胃のX線集団検診 | 0.6mSv |
| 広島爆心地 | 100Sv | 管理区域の規制値 | 1.3mSv/3月 |
| スペースシャトル |
1.0mSv/日 (一般人の年間許容量を1日で浴びる量) |
| 身近にある放射能 | Bq | 身近にある放射能 | Bq |
| 1Mトン水素爆弾 | 3.7x1021Bq | ||
| 原子炉 | 3.7x10 19 Bq | 癌治療装置 | 1.9x10 14 Bq |
| 増富温泉(山梨) | 11100 Bq/l | 60kgの人体 | 7400 Bq |
| 輸入食品の規制値 | 370 Bq/kg | 土壌 | 155〜1025Bq/kg |
| ホ−レン草 | 89〜222 Bq/kg | サラダ油 | 181 Bq/l |
| 尿 | 111 Bq/l | 牛乳 | 52 Bq/l |
| 海水 | 13 Bq/l | 河川水 | 3.7 Bq/l |
| 水道水 | 0.74 Bq/l | 核実験の総放射能 | 5x109Ci(約2x1020Bq) |
原子炉の事故とセシウム137
1986年当時のソ連ウクライナのチェルノブイリ原子力発電所において極めて重大な事故が発生し、原子炉内部の放射性物質が多量に放出された。
この図は日本で観測されたセシウム137の降下物で、1986年に大きなピークがみられる。この事故で半径30kmに住んでいた約12万人が避難した。
この時放出された放射性物質は広島・長崎の原子爆弾100個分に相当すると見積もられている。この事故では急性の障害で31名が亡くなり、2億5000万人が寿命が短くなる放射線レベルにさらされたと見積もられる。発電所から60kmに住んでいた15万人がメルトダウンののち、強制移住させられた。チェルノブイリの周辺は地球上で最も放射能が強い場所となっている。
放射線作業の従事者は線量計等で過去の被爆線量を記録しています。
胃の検査で、発砲剤と硫酸バリウムを飲んで台の上で転げ回りますが、かなり
この際X線を浴びます。この様なX線は全く個人の被爆線量に加算されていません。
医院に行っても所により安易にX線検査を行うところもあります。
癌などの検査の場合はその危険性と癌とを比べ、敢えてX線を当てている
のでしょうが、それでも非常に不思議に思っています。最近(2004年)海外の調査でも日本の医療検査による放射線の問題が報じられていました。
それはともかく
天然のK(カリウム)のうち放射性の40Kは0.0117%を占め、半減期12億8000万年です。天然のカリウム 1kgをとると 約30000 Bqの放射能があります。89%が40Caに変わり11%が40Arに変わる性質を持っています。
人体中(60kg)の放射能は半分以上この40K(約4000Bq)のせいで、ついで14C(2500Bq)が占めていると思います。
放射性核種の速度則より10半減期の後では元の1024分の1、 20半減期では100万分の1(10-6)、30半減期後では10億分の1(10-9)、 40半減期では1兆分の1(10-12)で半減期の短い核種はたちどころに消えてしまいます。100万kWの軽水炉を運転すると3.1x(1018)のヨウ素131が生成します。 これが事故ですべて放出されたとして、1年弱で3.1x106bqまで減少します。一方ヨウ素129は100万KWの軽水炉1年運転後で5x1010bqで、半減期1570万年より1年後も減少しません。この様に環境への影響は半減期も考えて判断する必要があります。
[4n+1系列] これはネプツニウム系列といいます。
241Puが出発なのですが
途中の237Npが半減期が最長で214万年であることから名付けられています。
214万年と地球の歴史からはみて短命で天然には存在しません。
[4n+2系列] これはウラン系列と呼ばれています。
親が238Uで
その半減期が45億年と地球の年と同程度なため天然に存在しています。
238U α→ 234Th β→ 234Pa β→ 234U α→ 230Th α→ 226Ra α→ 222Rn α→ 218Po β→ 218At β→ 218Rn →・・206Pb
[4n+3系列] これはアクチニウム系列と呼ばれています。
235Uが親です。
半減期は7億1千万年少し短命ですが天然に存在します。
235U α→ 231Th β→ 231Pa α→ 227Ac β→ 227Th α→ 223Tr β→ 223Ra α→ 219Rn α→ 215Po β→ 215At →・・207Pb
全ての系列は最後に鉛に落ちつきます。
14N + n → 3H (T) + 12Cや
14N + n → H+ (p) + 14C
考古学的試料では14Cが絶えず大気上層で作られ、大気中の存在比が0.03%
と比較的一定で(比放射能は炭素1g当たり15壊変/分=250Bq/kg-C)
程度でCO2の循環で海水中や植物・動物の体内に取り込まれています。
動植物の死と共に14C炭素の循環の鎖は絶たれ、5730年の半減期で減衰して
いきます。この方法は数万年前までの遺物の年代測定に適用できます。
この方法は過去の14C濃度が一定であった必要がありますが、過去の変動による
補正が必要なこともあります。

| 3H | 12.33y β- 0.0186MeV | 14C | 5730y β- 0.156MeV | 32P | 14.26d β- 1.711MeV |
| 40K | 1.28X109y β-1.33MeV(89%) γ1.461MeV(11%) | 60Co | 5.271y β- 0.318MeV γ 1.173MeV,1.333MeV | 63Ni | 100.1y β- 0.0669MeV |
| 90Sr | 28.78y β- 0.564MeV | 131I | 8.021d β- 0.606MeV(89.5%) γ0.364MeV(81.7%) →131mXe | 131mXe, | 11.77d IT(100%) γ0.164MeV |
| 137Cs | 30.07y β- 0.514MeV 1.176MeV→137mBa | 137mBa | 2.552m IT γ 0.662MeV | 222Rn | 3.824d α 5.490MeV(99.9%) |
| 226Ra | 1600y α 4.602MeV(5.6%) 4.784MeV(94.4%) |
放射性ヨウ素と壊変図
原子炉の事故が起こったとき気体になりやすいヨウ素131I,132I(t1/2=2.3h),133I(t1/2=20.8h)が広がることが知られており、これらのヨウ素は食物や呼吸を通して体の中に入っていきます。ヨウ素は甲状腺に集まる性質があり、体の中のヨウ素の量が少ないほどその割合が大きくなります。甲状腺への集中を防ぐため事故直後に、成人の場合、ヨウ素剤130mg(ヨウ素として100mg)を1日1回、必要に応じ3日間から7日間連続して飲みます。子供は成人の半分の量を投与することになっています。日本人は海産物から摂取するヨウ素量が多く、欧米人に比べ事故時の放射性ヨウ素の甲状腺への集中度は低くなると言われています。
ここには核分裂生成物のうち、代表的な2種のみの壊変図式を表しています。たとえばヨウ素の場合、約90%のヨウ素131は0.606MeVのβ線を放出し、約80%が0.364MeV
のγ線になるということを示しています。