ポリ塩化ジベンゾ-p-ジオキシン(PCDD 75種)、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF 135種)
ダイオキシンのなかで、もっとも毒性、発癌性、胎児に対する催奇形性が強いのは、2,3,7,8-四塩化ジベンゾパラダイオキシン(TCDD)である。この化合物は猛毒でその急性毒性は青酸カリの1万倍以上といわれる。ちなみに致死量はヒトで、体重1kgに対して10μg(マイクログラム:100万分の1g)といわれている。また、その発癌性もきわめて高く、とくに肝臓癌や肺癌をひきおこすことが証明されている。
ダイオキシンの発生原因
ダイオキシンは、それ自体を利用する目的で製造されたものではない。農薬やPCBなどの生産工程で不純物として生じ、金属の精錬や再生過程でも生じる。また、製紙工場からの廃液や自動車の排気ガス、都市ゴミや産業廃棄物の焼却施設での塩素をふくむプラスチック類などの人工有機化合物の焼却などによっても生じる(→ ゴミ問題の「ダイオキシン汚染」:ゴミ処理)。したがってダイオキシンは現在の大量生産や大量消費、大量廃棄にもとづく多様な経済活動やライフスタイルから生みだされたといえる。
ダイオキシンの関連事故
過去の大きなダイオキシン汚染は、この物質のもつ強い毒性をありありとしめしている。ベトナム戦争で1961年から1970年にかけ,アメリカ軍が「枯れ葉作戦」で大量に散布した除草剤には、ダイオキシンが不純物(2,3,7,8TCDDが170kg相当)としてふくまれていたが、除草剤が散布されたベトナムやカンボジアの地域住民に神経障害や流産、先天性異常が多発した。アメリカにおいても、1977年,この除草剤を製造していた化学工場(ニューヨーク州バッファロー付近のフッカーケミカル社)の跡地からダイオキシンが検出されたため、連邦政府が町ぐるみ買収し、住民が移住するというようなこともおこった。
1976年にはイタリア北部のセベソの農薬工場での大爆発事故で、ダイオキシンをふくむ有毒ガスが噴出し(2,3,7,8TCDDが250-300g相当)、その後、長期にわたって周辺住民の間で健康被害が多発した。 1977年には、アメリカ合衆国ニューヨーク州のラブキャナルでは、大手化学薬品会社の廃棄物貯蔵地からダイオキシンが付近の住宅街や学校の校庭にもれだし、大きな健康被害が生じた。
1983年(昭和58)、松山市のゴミ焼却場の燃え残りからダイオキシンが検出されたことを皮切りに、85年以来実施されている環境庁の全国調査でも約半数の魚と、全調査点の海底の泥から検出されている。西日本の9都市で飛灰には240ppb,燃えがらに61ppbのダイオキシンを検出。
この計算から推測すると都市ゴミの焼却で1億2000万人あたり793kgのダイオキシンが発生していると考えられます。
ゴミの中では塩化ビニル等の有機塩素や食塩等の無機塩素と炭素がゴミの飛灰粒子表面で鉄原子を触媒として反応、ダイオキシン類を生成。集塵機でも300〜400℃で生成。
日本では都市ゴミと産業廃棄物が大量に焼却されており、焼却施設から日常的に生じるダイオキンによる健康被害が懸念されているが、その実態調査ははじまったばかりで、規制措置はきわめて不十分である。また、食物を通じてのダイオキシンの摂取許容量も欧米の基準値よりも10倍以上高く、今後母乳から乳児へのダイオキシン汚染の実態などについても十分な調査がのぞまれる。→環境問題
カネミ油症事件の原因物質はジベンゾフランとコプラナーPCBでしたが、コプラナー
PCBもダイオキシン類と類似の毒性を示すので、近くダイオキシン類に含まれる予定です。TEF(2,3,7,8-TCDD毒性等価量Toxicity Equivalency Factor)
日本の課題
ゴミの焼却率
日本は70%以上、欧州各国は20〜60%、米国20%未満である。
施設数も約1800(1990年)と多く、(ドイツ約50、米国約150施設)規模が小さい。
低温焼却の問題
都市ゴミの焼却で発生するダイオキシンは低温ほど多く発生し,500℃と700℃を比較すると10:1,500℃と1000℃を比較すると100:1にもなる。800℃で処理し、CO濃度を100ppm以下にすることが必要。集塵機に入る排ガス温度を300より下げる必要あり。一日許容摂取量(TDI Tolerable Daily Intake)
TDI(pg-TEQ/kg/日)体重1kg当たり
日本 10(厚生省) 環境庁指針は5
カナダ 10
WHO(欧州) 10
オランダ 10
スエーデン 5
ドイツ 10
イタリア 10
米国EPA 0.01
米国食品医薬品局 0.006
ダイオキシンの摂取量 98%は食事から。合計12.45pgTEQ/kg程度。
このうちコプラナーPCBの割合が多い。
母乳汚染
ダイオキシンは脂溶性で母乳に濃縮されやすい性質がある。平均で10〜50pg-TEQ/g
(平均25pg-TEQ/g)。初産者と経産者では20〜50%の濃度低下がみられる。
新生児のダイオキシン摂取量は70〜230pg-TEQ/kg/日となる。WHOは母乳推奨の勧告。