基本的なタンデム質量分析計は以下のような構成を持っている。

衝突誘起解離(collision induced dissociation,CID)
四重極質量分析の原理


相対する電極を対とする四本の電極に正負の直流電圧Uと交流電圧Vを重畳させU/Vを一定にしてU(V)を変化させると条件にかなったm/zのイオンだけが通過することを利用して質量分析を行っている。
1.イオンは通常10-20V程度の低イオン加速電圧で加速されてアナライザーに導かれる。
2.イオンはロッドによる電場によってxとy軸の両方向に振動する。
3.ここで図に示したaとqを定義する。
4.ある一定のa/q値ではイオンの振動は安定であり、ロッドの中を通過することができる。
5.a/qが不安定な値になっている場合は振幅が大きくなりロッドに衝突したり、ロッド外に放出される。
通常、マススペクトルの走査はU/V0比を一定に保ち、UとV0を変化させることで行っている。記録された質量mはV0に比例するのでV0の増加と質量mの比例したマススペクトルが得られる。
三連四重極質量分析
三連四重極質量分析(Triple-quadrupole instruments, TQ)は第1の通常の四重極アナライザーQ1と第2の交流成分(r.f)のみをかける四重極衝突室Q2第3の通常の四重極アナライザーQ3から成り立っている。
1. イオン源に試料が導入される。
2. 真空系へのインターフェースを経てQ1アナライザーに測定イオンが導入される。
3. Q1で前駆イオン(Precursor ion)を選択する。
4. Q2に導かれた前駆イオン(Precursor ion)は中性分子との衝突{Collision Activated Dissociation(CAD),Collicion Induced Dissociation(CID)}によりフラグメントイオン(Fragment ion or Product ion)となる。
ここでポジティブモードでは
(Parent)+ → (Product)+ + (Product)Neutral
ネガティブモードでは
(Parent)ー → (Product)- + (Product)Neutral
5. 第三番目の四重極Q3で目的のフラグメントイオンを測定する。
TQでは以下のようなMS/MS測定が可能となっている。
1.MS/MS Puroduct Ion Scan: Q1で特定のイオン(Precursor ion)を選択し、そのイオンの分解によって生じた全フラグメントイオン(Puroduct Ion)をQ3でスキャン測定する。
2.MS/MS Precursor Ion Scan: Q3を特定のフラグメントイオンを検出できるように設定しておき、そのフラグメントイオンを生成する全ての前駆イオンのスペクトルをQ1を走査(Scan)することで測定する。代謝物の同定に良く用いられる方法である。
3.MS/MS Constant Neutral Loss: 中性フラグメント脱離スペクトルは2つの四重極アナライザーQ1とQ3で測定するそれぞれの質量の差をその中性フラグメントの質量に相当する値に保って同時に走査することにより測定できる。
4.MS/MS Multtiple reaction Monitoring(MRM): Q1とQ3を固定した場合がMRMである。ある特定の分解反応はQ1を前駆イオンの質量に、Q3をフラグメントイオンの質量に設定して測定する。定量分析に最適である。
多くのPurecursor ionとProduct ionのペアー、例えば(A-B,A'-B',A"-B",etc.)がモニターできる。
イオントラップ(ITMS)質量分析計の原理

イオントラップのアナライザーは双曲面の3つの電極(リング電極)と2つのエンドキャップ電極で四重極と同様の電場を形成している。このエンドキャップとリングに囲まれた放物線状の空間にイオン閉じこめることができる。
特徴としてはイオンの濃縮により高感度微量分析が可能となる。
妨害成分を空間内から追い出すことで高いS/N比が得られる。イオントラップタイプの質量分析器ではフルスキャンで四重極質量分析器のSIMと同等の感度が得られる。
試薬イオンを系内にとどめてCIを高効率で行える。
親イオンをトラップし、そこに衝突解離を起こさせて生じる娘イオンを測定するMS-MSも可能。
イオントラップは質量選択不安定法(mass-selective instability mode)とよばれる方法で走査し、マススペクトルを得ている。この方法はDC成分を0Vに設定しておき、ある一定のm/zの値全てをトラップできるRFの振動数(1.1MHz)を選定しておく。
1.始めに電子ビームを流してトラップ室内でイオンを生成する。
2.約1ms後に電子ビームを遮断して最初の設定値m/z以下のイオンを取り除く。
3.RF電圧を増加させてイオンの運動エネルギーを上げる。イオンはz軸に沿って不安定な軌道を描く
4.RF電圧の増加によりm/zの小さい順に不安定領域に達してイオン検出器で測定される。
イオントラップ(ITMS)質量分析計によるMS/MS
イオントラップ(ITMS)によるMS/MSは補足(トラップ)されているイオン群を時間的に分離された操作の下で測定を行っている。他のMS/MS装置が空間的に分離された装置によって分離されているのと大きく異なっている。
ITMSで特定の前駆イオンからフラグメントイオンを測定するMS/MSでは
1.まずイオンをイオントラップ内に導入する
2.続いて特定の前駆イオン以外のイオンをトラップから除く。
3.続いて前駆イオンの励起のため適当な交流電圧をトラップのエンドキャップに追加供給(ティックル電圧)する。
4.ティックル電圧で励起された前駆イオンは運動エネルギーの増大により中性の気体分子と衝突する。
5.最後に交流(r.f)電圧操作を行い、生成したフラグメントイオンを順次、その質量に従ってトラップから放出する。
MS/MSにイオントラップを用いることで非常に高いCID(衝突誘起解離,collision induced dissociation)効率が得られる。連続的にイオン放出と励起操作を行うことで逐次的CIDを行い、(MS)nを行うことができる。イオントラップによるMS/MSではTQと異なり前駆イオンのスペクトルまたは中性フラグメント脱離スペクトルは測定できない。
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